イタリア:旅のスケッチブック

イタリアを旅したり暮らしたりしながら、つれづれに描いたスケッチなど。

2019年07月

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ヴェネチアから西(ミラノの方角)に戻ったところに、ヴィチェンツァという小さくて落ち着いた町があります。
イタリアは小都市が国家として独自に歴史文化を育んだ時代が長かったせいでしょうか、この町にも数冊の本が書けそうなくらい様々な歴史があるようです。

とりわけ有名なのが、建築家パラーディオ(パッラーディオ)の存在でしょう。
ルネサンス後の十六世紀初めにヴィチェンツァに近い大きな町パドヴァに生まれたパラーディオは、この町に多くの建築作品を遺していて、町の中心にある「バシリカ」と呼ばれる公会堂も代表作の一つです。
basilica

また、上のスケッチに描いた「オリンピコ劇場」も彼の設計といわれています。
teatro

劇場の特徴は、古代ローマをモチーフにした舞台が遠近法的な奥行きを持って見えるように作られていることです(奥に見える大道具を遠近法に合わせて角度やサイズを調整して作られているので、実際より奥深く見えます)。

パラーディオは当時の貴族のために郊外の別荘を数多く設計していますが、その際にルネサンス建築を深く研究して自分なりに昇華したデザインを生み出しました。
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パラーディオの建築スタイルはその後イギリスの建築に影響を与え、さらには建国当時のアメリカ建築にも大きな影響を与えたのだそうです。
usa
聞くところによれば、ホワイトハウスの建築デザインにもパラーディオの影響があるとか。

あらためてイタリアの芸術文化の奥深さ、影響力に驚かされる小さな町の散策でした。

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こんなスケッチもあります:

Brano
ヴェネチア本島から連絡船(トラゲット)で小一時間揺られて、ブラーノ島を訪ねました。

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上空からの航空写真でも、町並みの色がわずかに見えています。

本来はヴェネチアンレースの産地として有名なところだそうですが、近年は中国製のレースに押されていたり、偽物が紛れ込んでいる、という話も聞きます。
ブラーノ島はとにかく町並みの建物が極彩色に塗られていて美しいことろなので、小さな島の中をぶらぶらと散策し、お昼ご飯を食べて本島へ戻りました。
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特にお天気の良いタイミングで訪れると、地中海の明るい日差しの下で、一見無秩序に並んでいるようにも見えるピンクや空色の壁のコントラストがとても美しく感じられます。
色の見え方と太陽の光の関係というのは、かなり重要なのですね。

同じように太陽の降り注ぐ国、というイメージがあるアメリカ大陸のメキシコには、こんな町があるとか。
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妙なたとえになりますが、なんとなくブラーノ島とギリシャの島を足して二で割ったような…

同じくメキシコが生んだ20世紀の偉大な建築家ルイス・バラガンの建物にも、鮮やかな色が効果的に使われています。
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異なる(色彩)文化のもとに育ったものがみるとエキゾチックに感じますが、現地の人たちにとっては自然な色使いなのでしょう。
島(町)の人が自然にこの配色を選んだところに美しさがあるのかもしれません。

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こんなスケッチもあります:


VeneziaB
ヴェネチアの細い路地をそぞろ歩きしながら立ち止まって描いたスケッチです。
アカデミア橋という大きな橋の近くだったようですね。
運河が網の目のように張り巡らされているヴェネチアの町を歩くにはいくつもの橋を渡る必要があり、大小を問わず、橋の下を小舟が通れるように太鼓橋になっているのが特徴です。

ヴェネチアで一番有名な橋は、こちらの「リアルト橋」でしょう。
フィレンツェのポンテ・ベッキオのように橋の上にお店が並んでいます。
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観光的には、こちらの「ため息の橋」も有名かと思います。監獄と刑場をつなぐ橋だとか。
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最近はこんなモダンなデザインの橋もできたようですね。
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アカデミア橋は木構造になっていました。
橋を渡った先にはグッゲンハイム美術館別館などがあります。
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現代のヴェネチアは観光都市であり、本土からの入り口(鉄道駅)以外は水によって人の流入がコントロールされるせいか、イタリアの主要観光地の中ではもっとも治安が良いと言われています。
実際、夕暮れを過ぎてもほろ酔いで散策していてスリに遭う危険を感じないというのはありがたいことです。
ただし、脚がもつれて運河に落ちないよう注意が必要なのですが…
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こんなスケッチもあります:

murano
ヴェネチア本島から連絡船でムラーノ島へ行ってみました。

ムラーノ島はヴェネチアングラス(ガラス細工)の工房が集中している小島です。
ヴェネチアが都市国家だった全盛期に、「火事の危険とガラス技術流出の防止から、全ての工房と職人をこの島に集めた」と塩野七生の本に書いてあった記憶があります。

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現在ヴェネチアングラスはムラーノ島の工房でも実際に作られていますが、シャンデリアなど大きなもの、量産が必要な(といっても手作業中心)ガラス細工などはヴェネチア対岸の本土にある地域に移っているようです。
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本島のサン・マルコ広場周辺を散策すると必ずムラーノのガラス工房まで無料で送迎しますよ、という客引きが日本人観光客に声をかけてくるそうです。
実際、現地でイタリア人の客引きに日本語で声をかけられたことがありますが、きれいな発音だったので「日本語うまいですね」とイタリア語で返したら「東京の二子玉川に住んでた」といわれてずっこけそうになりました。

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ムラーノ島の町並みは本島とあまり変わりません。

ちなみに、さらに連絡船で小一時間移動すると、ブラーノ島というさらに小さな島があります。
(伝統工芸品のヴェネチアンレースの産地だそうです)
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こちらは建物が色とりどりに塗装されてとても美しいところです。

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こんなスケッチもあります:


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わずかな時間を縫うようにイタリア留学の準備で初めて渡伊したとき、別に用もないのに立ち寄ったのが初ヴェネチア体験でした。

その後もこの水の町で生活する機会はなく、数泊または日帰りで訪れることばかりでしたが、ヴェネチアは数あるイタリアの美しい町の中でも独特の魅力があると思います。

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1990年代半ば、日本ではイタリアブームと言われるような現象がありましたが、その少し前の時期に留学の準備をしていたので、イタリアに関する情報は意外なほど限られていました(例えば当時、東京でもイタリア語を学べる学校が片手で数えられるほどでした)。

当時熟読していた塩野七生の「海の都の物語」や陣内秀信のヴェネチア都市研究の本の影響で、どうしても直接自分の目でヴェネチアを見ておきたかったのです。

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ヴェネチアは本で読んだとおりの不思議な町でした。
また、水路が道路の代わりをしている(町の中には徒歩で目的地にたどり着ける迷路のような道はありますが)というヴェネチアの町の特殊性で、「建物の玄関が水に面している」と本に書かれているとおりだったことにもちょっと興奮しました。

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もうひとつ、当たり前のことなのですが、日本に比べて乾燥したイタリアの風土の中で、この町だけはたっぷりとした湿気を感じたことを覚えています(夏に宿の窓をうっかり開けたとたん、運河からわいてきた蚊が部屋に入ってきて閉口しましたが…)。

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こんなスケッチもあります:


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