ヴェネチアから西(ミラノの方角)に戻ったところに、ヴィチェンツァという小さくて落ち着いた町があります。
イタリアは小都市が国家として独自に歴史文化を育んだ時代が長かったせいでしょうか、この町にも数冊の本が書けそうなくらい様々な歴史があるようです。
とりわけ有名なのが、建築家パラーディオ(パッラーディオ)の存在でしょう。
ルネサンス後の十六世紀初めにヴィチェンツァに近い大きな町パドヴァに生まれたパラーディオは、この町に多くの建築作品を遺していて、町の中心にある「バシリカ」と呼ばれる公会堂も代表作の一つです。
また、上のスケッチに描いた「オリンピコ劇場」も彼の設計といわれています。
劇場の特徴は、古代ローマをモチーフにした舞台が遠近法的な奥行きを持って見えるように作られていることです(奥に見える大道具を遠近法に合わせて角度やサイズを調整して作られているので、実際より奥深く見えます)。
パラーディオは当時の貴族のために郊外の別荘を数多く設計していますが、その際にルネサンス建築を深く研究して自分なりに昇華したデザインを生み出しました。
パラーディオの建築スタイルはその後イギリスの建築に影響を与え、さらには建国当時のアメリカ建築にも大きな影響を与えたのだそうです。
「トマス・ジェファーソンはいかにパラーディオの影響を受けたか?」という興味深い記事(英文)もありました。
聞くところによれば、ホワイトハウスの建築デザインにもパラーディオの影響があるとか。
あらためてイタリアの芸術文化の奥深さ、影響力に驚かされる小さな町の散策でした。
こんなスケッチもあります:
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